2021.09.07
お家の「気密性」は大丈夫?断熱と合わせて大切にしたい「気密」の話
最近、「〇〇基準の断熱性能!」という広告やCMをよく目にするようになりました。しかし高断熱を謳っている建築会社で建てたのに「冬が寒い…!」「光熱費が安くならない…!」といったお話をよく耳にします。そこで今回は本当に「冬暖かく・夏涼しい家」を実現するために、「断熱」と同じくらい大切な「気密」についてお話ししていきます。
目次
- 気密性の高い家とは「隙間が少ない家」のこと
- 気密の目安値は0.7以下
- 高気密住宅のメリットとは
- 高気密住宅のデメリットとは
- 「気密性」が大々的に宣伝されないワケ
- まとめ
気密性の高い家とは「隙間が少ない家」のこと
お家でいう「気密性」とは、簡単にいうとそのお家にどれだけ隙間がないかということです。つまり「気密性が高い家」とは、言い替えると「隙間が少ない家」ということになりますね!
気密性は「C値(相当隙間面積)」と呼ばれ、お家の延床面積あたりの隙間量(㎠/㎡)を表します。
【C値の求め方】
C値(㎠/㎡)(相当隙間面積)=家全体の隙間の合計(㎠)÷建物の延床面積(㎡)
C値は隙間の面積を表していますので、数値が小さければ小さいほど優れた気密性能を持っているということになります。目安としてC値=5.0であればはがき5枚分、C値=1.0であればはがき1枚分の隙間に相当すると言われています。
気密の目安値は0.7以下
現在、国が定める気密性の基準はありません。ただし、ひとつの目安として、C値が1.0以上だと住宅の換気効率が悪くなるといわれています。そこで、最低でも1.0以下、できれば0.7以下を目指すことをおススメします。
窓が多い家や凹凸が多い家では比較的高くなりやすいですが、一般的な住宅において、C値0.7というのは決して高すぎる数字ではありません。断熱材の施工、気密テープの施工などに気をつけることで十分に達成できる目標です。何より、検討している業者さんが気密測定をしっかり行い、気密をよくする工夫がなされているのかその姿勢を見極めることが重要だと考えます。
高気密住宅のメリットとは
それでは住宅において気密性はなぜ大切なのでしょうか。気密性が高いとどんなメリットがあるのか、詳しく見ていきましょう!
・断熱性を損なわない
断熱と気密を冬の防寒着で例えると「断熱」はコートやダウンジャケットの生地の部分、「気密」はボタンやジッパーの部分あたります。いくら暖かいコートやダウンジャケットを着ていたとしても、ボタンやジッパーが全開であればちっとも暖かくありませんよね。
これをお家に置き換えると、外の空気が入ってくる隙間を残したまま、冷暖房をかけている状態。どんなに断熱性の高い住宅で冷暖房をしても、隙間から外気が出入りしてしまう状態では意味がありませんよね。このように隙間から空気が通り抜けていかないようにすることが「気密」の役目です!「冬暖かく・夏涼しい家」の実現には断熱性と同じくらい気密が大切です。
・壁内結露を防止する
気密性が低いと隙間から空気が出入りしてしまい、壁の中で結露を起こしてしまいます。この「壁内結露」が起きるとカビが繁殖しシックハウスの原因になったり、木をダメにする腐朽菌やシロアリ被害の原因となります。つまり、家の寿命にも影響するのです。湿気の多い富山石川では特に大切な要素ともいえますね。
・適切な換気計画を行える
気密性が確保できていないと、しっかりとした換気計画も行えません。破れたストローで吸い続けているようなもので、適切に空気の出し入れができなくなります。昔の家は隙間だらけだったので逆に必要ありませんでしたが、現代のお家のつくりでは換気がうまくいかないと空気のよどみができてしまうため注意が必要です。
高気密住宅のデメリットとは
結果から言うと、デメリットはほとんどありません!高気密と聞くと息苦しいイメージを持たれるかもしれませんが、実際はその逆。現在義務化されている24時間換気の効率も良くなり、新鮮な空気を取り入れやすくなるため、むしろ気密が良いことの方が望まれます。
また、高気密住宅だからといって窓を開けたらダメということもありませんので自然の風を十分に取り入れて生活していただくことも可能です。
1点だけ注意が必要なのは、ファンヒーターや石油ストーブを使えないこと!家の中で火を燃焼させて暖める暖房器具は、その燃焼ガスが室内に充満すると酸欠のおそれがあるからです。
ただ、排気用の煙突がセットのFF式のファンヒーターや薪ストーブは使用できますので、本物の火をみてぬくぬくするのが好き!という方もご安心下さい。
「気密性」が大々的に宣伝されないワケ
断熱性は大きく宣伝されることが多いですが、気密性が大々的に宣伝されることは比較的少ないですよね。断熱と同じくらい大切な気密がなぜ宣伝されないのか、その理由を見ていきましょう。
・現場での気密測定が必要
断熱性を表すUA値であれば、図面と使う素材がわかれば計算上求めることができます。しかし、気密性C値は実際の現場で専用の機械を用いて測定しなければなりません。その結果をもとに算出するので、手間とお金がかかるのです。
・現場単位でバラつきが出る
窓の多さ、形状など間取りによっても左右されますが、気密性は現場の施工の丁寧さでも変わってきます。そのため、図面と素材が全く一緒でも同じ数値になるとは限らず、業者側からするとPRがしにくいという点もあります。
・気密測定を行っている業者が少ない
意外に思われるかもしれませんが、そもそも1棟1棟気密測定を行っている業者さんは少ないのが現状です。測定していないと、だいたいこれくらい確保できるだろうという理想値のカタログスペックを出すことはできても、実際の「このお家でこれくらい!」と示すことはできません。
例えばC値1.0以下を謳っているのに実際の現場では2.0以上、ということも大いにありえます。もしかしたら正確な施工に自信のない住宅会社は測定したくないという裏事情もあるかもしれません…。
・国の基準が削除された
国の定める省エネ基準においては、平成11年基準ではC値は5.0以下(寒冷地では2.0以下)というものでした。その後、平成25年の基準では項目自体が削除されており、現在明確な基準はありません。どの文献や記事を読んでも気密の大切さは伝えられているのにホント不思議です…。国の基準がなくなった以上、メーカー側も強くアピールしなくても良いと判断されているのかもしれません。
以上のように、大部分が業者さんの都合といえます…。
でも、高気密高断熱を謳っているのに、気密測定を行っていないというのは少し騙されたような気分になりませんか?
「冬暖かく・夏涼しい家」にしたい!という方は、断熱性能だけでなく、気密測定を1棟1棟しっかり行っているのか、実際の値はどのくらいなのかも要チェックです。
まとめ
今回は意外と見落とされがちな「気密性」についてお伝えしました。断熱と気密、どちらか片方だけでは本当に「冬暖かく・夏涼しい家」は実現できません。大々的に宣伝される「断熱性能」だけでなく、「気密性能」にも目を向け、高気密高断熱な家づくりを考えていただければと思います。
最後に、タカノホームでは1棟1棟気密測定を行っております。C値は0.2~0.7の間でおさまっており、平均としては0.4前後です。ご興味ある方は実際の工事途中の現場案内も行っていますので、ぜひお問合せ下さい。
余談ですが気密性の高いお家ではキッチンの換気扇を強にすると、家の中に空気を入れようとする力が働き、玄関のドアが開きにくくなります。余計な隙間がないからこそ起こる現象です。これは自動ドアがついている常設展示場では体感できないので、是非実際のお家やお近くの街なか展示場で体感いただきたいと思います! ▶街なか展示場はこちらから!
WRITER
山際 幸士
金沢展示場 営業
今年で入社7年目になります。文系出身で入社してから日々住宅の勉強を続けていますが、知れば知るほど奥が深い業界でまだまだ学んでいかないといけないことも多いなと感じる日々です。
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