2021.12.07
説明の義務化がスタート!新築の前に知っておきたい「UA値」
断熱性の基準として多くの場所で用いられている「UA値」。聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。2021年4月からはお家の省エネ性についての説明が義務化されましたので、これから新築をお考えの方は必ず耳にする言葉になります。その時に何かよくわからない…とならないためにも、どのようなものなのか簡単に把握しておきましょう!
目次
- そもそも「UA値」って何?
-「Q値」とは何が違うの? - 実はたくさんあるUA値の基準
- 結局どこまで求めればいいの?
- まとめ
そもそも「UA値」って何?
まずはそもそも「UA値」とは何なのかを見ていきましょう。UA値とは、「外皮平均熱貫流率」の略称で、建物内部の窓や壁などから、外部へと逃げる熱の量を外皮等の面積全体で平均した値のことです。簡単に言うと「熱の逃げやすさ」を示した数値で、数値が小さいほど高性能ということになります。その求め方は、
UA値[W/㎡・K]=(温度差1℃あたりの建物全体の熱損失量[W/K])÷(外皮面積[㎡])です。
わかりにくい言葉ですが「外皮」とは壁や床、天井などの外に面している部分のことを指します。ただし、この計算では換気や家の隙間から漏れる空気の移動による熱の移動は含まれていません。
「Q値」とは何が違うの?
断熱性能を表す数値として、「Q値」という言葉も聞いたことがあるという方もおられるかもしれません。ここが混乱ポイントですよね。Q値とは、熱損失係数のことで、小さければ性能が良いことを表しているのはUA値と同じです。求め方は、
Q値[W/㎡・K]=(温度差1℃あたりの建物全体の熱損失量[W/K])÷(床面積[㎡])となります。
違いとしては、式からもわかるようにUA値は「壁や床、天井などの外皮の面積で割る」という計算方法で算出しているのに対して、Q値は「建物の延床面積だけ」で算出していますので、表面積が大きいお家では数値が悪化してしまいます。例えば、細長いお家や天井高が高いお家などは数値が悪くなってしまうのです。ただし、良い点としては換気による熱損失も考慮しているので、冷暖房費の算出に使われる場合もあります。
それぞれに良い点悪い点がありますが、国の基準としては2013年からQ値に代わってUA値が使われるようになっていった経緯もありますので、メーカー選びの判断基準としてはUA値で見比べることをおススメします。
実はたくさんあるUA値の基準
「次世代省エネ基準」「断熱等級」「ZEH基準」など…。UA値を用いた「断熱性能」の評価基準は実はたくさんあります。ここではそれぞれの基準がどのようなものなのかをご紹介していきます!
・断熱等級3
平成4年に制定された「断熱性能」に対する評価基準になります。通称「新省エネ基準」と呼ばれていた基準になります。現在制定されている様々な基準と比べるととても低い断熱基準となっています。現在はもう使われていない基準ですね。
・断熱等級4
平成25年に制定され「次世代省エネ基準」と呼ばれ断熱等級で表されるものの中では最高等級の基準となっています。義務化された説明の中で登場するするUAの基準はこちらになります。ただ、あくまで国の定めている断熱等級の中では最高というだけで、現在の住宅建築の技術レベルからするとさほど難しい基準とは言えません。また、今後の法改正にて断熱性能等級4は法律が要求する最低限の水準となるという話もあります。
・ZEH基準
大々的に宣伝しているメーカーがあったり補助金制度があったりと一番聞いたことがある基準がこのZEH(ゼロエネルギー住宅)基準かもしれません。この基準は厳密に言うと「断熱」だけの基準ではなく、太陽光発電などをつけて「発電エネルギー≧消費エネルギー」を目指そうとする基準です。このZEHを実現するために満たすべき様々な項目の一つに「断熱性能」に対する基準があります。
・HEAT20
世の中には「断熱」の普及をめざした団体がいくつかあり一般社団法人「 20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会」、通称「HEAT20」もその一つです。こちらで定めている基準はその他の基準にかなり比べ高く設定されており「断熱性能」に対して多少マニアックな方向けというイメージもあります。
ここまで基準の種類についてご紹介しましたが、最後にそれぞれのUA値の基準値を表にまとめましたので、自分が今住んでいる地域の基準値を確かめてみてください。
結局どこまで求めればいいの?
ここまで色々なUA値の基準についてご紹介しましたが「じゃあ結局どの基準の数値まで求めればいいの?」と思われたのではないでしょうか。もちろん低すぎる基準はもってのほかですが、高い数値を求めてすぎてもかかった費用に対して実感できる効果は減少してしまうので、ちょうどいい塩梅というものが大切になってくると思います。
では目指すべきちょうどいい塩梅とはどこなのでしょうか。先に答えを言ってしまうとそれは「ZEH基準」です。まず、断熱等級4「次世代省エネ基準」ですがこれはさほど高くない基準なうえに今後法律で要求されるUA値の最低水準になるであろう基準ですので、これから「冬暖かく・夏涼しい」家を建てたい方が求める基準としては不十分だと言えます。逆にHEAT20 G1G2G3ですがこちらの基準は現在の日本の住宅事情からするとかなり厳しい基準で、既存の日本のお家でクリアできる家は1割にも満たないと言われています。もちろん高い基準を目指すことは悪いことではありませんが、HEAT20 の特にG3までになるとかなりコストもかかり現実的ではないように思います。ですので、クリアするべき最低ラインとしては「ZEH基準」、より断熱性も考えていきたいという方は「HEAT20 のG1やG2」に挑戦していくというスタンスをおススメします。
(※2021年11月に発表された補助金制度でも、省エネ性に合わせて段階的に補助金額が決められていますが、その最大の100万円の補助を受けるために必要な断熱性能は「ZEH基準」となっています。)
そして、「冬暖かく・夏涼しい」お家には、断熱性「UA値」だけでなく、気密性や換気、風通し・日射計画など様々なポイントがあります。それらを総合的に考えて、快適で省エネなお家づくりをしていきましょう!
まとめ
以上、断熱性の基準「UA値」についてお伝えしました。省エネ住宅の購入における新たな補助金制度が発表されるなど、ますます注目される断熱性能。様々な情報や謳い文句が行き交っていますが、その判断基準をしっかり理解することで、住宅メーカーの宣伝文句に惑わされることなく判断いただけるのではないでしょうか。もっと詳しく話を聞いてみたい、もしくは断熱性能を体験したいという方は是非展示場へ遊びに来て下さい。お待ちしております!
WRITER
山際 幸士
金沢展示場 営業
今年で入社7年目になります。文系出身で入社してから日々住宅の勉強を続けていますが、知れば知るほど奥が深い業界でまだまだ学んでいかないといけないことも多いなと感じる日々です。
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